4安楽椅子探偵ON STAGE 妄想捏造編

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男は静かに切り出した。

「田辺さん、あなたは、汚れている椅子を見たとき、前の公演に使った椅子を使おうと提案した。あなたは、あの古い椅子をわざわざ持ってきていた。そして、設置したのもあなただ。そう、いちばん怪しいじゃありませんか」

「だいたい、舞台監督が、あの釘が出たのを気がつかないはずがない!」
緑橋も叫んだ。

「そうだ、そうだ!」
「舞台監督なら、まず座り心地を確かめるはずだ」
「金山さんが、死んでてもおかしくないよな」
「田辺、怪しい、怪しい」
皆が大合唱した。

「田辺さん、あなたは、舞台監督の金山さんに毒針のことを気がつかれないようにと、気をそらし続けた。」

~田辺、金山回想~
「田辺、椅子の具合はどうだ」
「大丈夫です」
「どれ、座ってみよう』
「あ、僕、座ってみましたので大丈夫っす!」
「それより、なんか、美味しい差し入れきてましたよ。ほらほら、食べてきてください」
「そ、そうか、じゃあ任せたぞ」
にやりとする、田辺。
~田辺と金山の回想終わり~

「でも、見えるよね、釘が出てるの♪」
「うん、見える」
「凄い出てるのに」
「金山さん、気づけよ!全く」
皆が金山を白い目で見る。金山は肩を丸めた。
「そんな……俺の、せい?でも、俺座ってたら俺が死んでた?うわっヤバ、めっちゃヤバかったのに、なんでそんな白い目でみるんだー、そんな目でみないでくれ!」
金山が悲鳴をあげた。

「そうです。目です。目なのです」
男はまた指をつきだした。

「金山さんは、老眼で、釘が見えなかったのです!」

「老眼!」「老眼!」「老眼!」
皆、ずっこけた。

「続きはCMの後で」

~CM 安楽椅子探偵と忘却の岬妄想捏造編もよろしく!カテゴリーの裸探偵の岬から読んで下さいね!♪~

5安楽椅子探偵ON STAGE 妄想捏造編

5
「それに、安夫さん」
男の呼びかけに
「え?呼んだ?」
安夫があわてて飛び起きた。

「あなた、毒針が刺さった時、何も言いませんでしたね」
「は、はい」
「普通、何かが刺さったら、『あっ』とか『痛い』とか言うものです。背中になんか当たったら、体重かけていないので、すぐ立ち上がるはずですよね」

「うん、うん、そうかもなあ」
笛美が頷く。

「実は、田辺さんは、もっと深く突き刺していたのです。金山さんが『きっかけ出てますよ』と安夫さんを押した時、長い、長い腕を伸ばして、椅子の下お尻の下にブスッと刺したのです」

「そんな鑑識結果は、ありませんよ!ありませんよ!」
鑑識員が声を張り上げた。

「必殺だ!必殺仕事人だ!仕事人だ!」
安夫は何故か嬉しそうだ。

「というより、異常体質じゃないか?田辺、お前エイリアンだったのか?」
平野も何故か喜んでいる。

「お尻の下からブスッとやられ、安夫さんは、声を出す暇もなかったのです!」

「ありえない!そんなコントみたいなことあるわけないじゃないの!こんな嘘つき裸男、早くつまみ出してよ!」

楽太が拗ねだした。
「なんだよう。安夫殺しばっかとりあげやがってさ。俺の殺しは、置いてけぼりかよ」
「あら、まだ生きてたの?」
「拗ねない。拗ねない」
「いいから、いいから、あんたは大人しく死んでなさい」
長田、駒川、守口に言われ、すごすごと引き下がるしかない楽太だった。

6安楽椅子探偵ON STAGE 妄想捏造編

6

「なんだよ!そんなに言うなら、証拠があるんだろうな!」
田辺が凄んだ。

「証拠はある!」

「なにー!」

「証拠、証拠とほざくなら、私のように裸になってみろおーーーー!」

そう言うとその男は、服を脱ぎ出した。
皆が止める暇もなく全裸になった。

「きゃー」
素っ裸の男に女連中は大騒ぎだ。中でも三咲は顔を隠すふりをして、指の間からちらちらみている。

舞台監督の金山は慌てて背後からドライアイスの煙を送る。男の大事な部分はかろうじてドライアイスの煙に隠れた。

~説明しよう。この男、裸探偵ひら。自らが真っ裸になることで、犯人の心を開き、犯人の自供を促すのだ~

「えー、私が犯人なのよ!みんな私の長台詞聞いてなかったの?ね。聞いたよね」
江坂の必死のアピールは、実際に煙に巻かれていた。

皆が呆気にとられている中、一人、膝から崩れ落ちた者がいた。

田辺であった。

「うおー!そうだよ、俺が犯人だ!真犯人だ」
「な、なにー!」

「た、田辺、お前……お前……なんてことだ……」
緑橋が田辺に詰め寄った。
「……俺より声でかいじゃないか!」

「おーい、つっこむとこはそこじゃなーい」
天王寺が緑橋にダメだしをした。

7安楽椅子探偵ON STAGE 妄想捏造編

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「田辺さん、あなたは、コートの衣装を着ていましたよね。芝居が終わったというのに、ジャージに着替えてはいませんでしたよね」
男は、脱いだ服を着ながら言った。

「はい。金山さんに、台詞少ないのに噛んじゃダメだと、指摘されました」

「田辺さん、あなたのバスケットは三咲さんが持っていったとはいえ、そんなものは必要ありませんでした。あなたは、コートの下にペンキとドライアイスを隠して持っていったのです」

「田辺さん、あなたは、私のように裸にはなれないはずだ。なぜなら、あなたの肌には、隠したドライアイスで低温火傷をした跡がついているはずです。そして、おそらくはペンキも!」

そう言って、裸探偵は、田辺の上着を捲りあげた。

果たして、そこにはペンキと火傷の跡があった。

「田辺……風呂に入らなかったのか?」
平野が泣いた。

「バカだねえ、田辺、ドライアイスはドライアイスは……ポケットに入るじゃないの。なんで脇腹なんかに挟むのよ!」
長田もすすり泣いた。

「舞台やってる最中なんか、風呂なんかに入ってる暇なんかないっすよ!金山さんならわかってくれますよね!老眼の金山さんなら」

「いや、そこは老眼は関係ないよね。関係なくない?『スタッフだからわかってくれますよね』だよね?」

「ペンキの跡は風呂で綺麗になるとして、火傷の痕は隠せませんね」

「こんなもの証拠にならないわよ!殺害の時の、ドライアイスのせいで火傷になったかどうかだなんて、誰にもわからないわ!私が犯人だって言ってるじゃないのー。」
江坂がわめいた。

「そうだ、そうだ」
刑事も後押しした。

「でも、江坂さん、証拠うんぬんは、あなたにもあてはまるんです。消去法であなたにたどりつき、あなたは自供しましたね。だが、あなたが犯人である『証拠』はなかったはずだ……あなたが自供しただけだ。私は裸になることで田辺さんの心を開き自供を導いた。同じことではないでしょうか」

「そ、そんな幕引きなの?ありえないわ、こんな解決編!この犯罪は美しくない。エレガントじゃないわ、決して、決してエレガントじゃない!」
そう言って、今度は江坂が崩れ落ちた。

「田辺空彦、中崎兄弟殺害容疑で逮捕する。後は署で詳しく聞かせてください」
刑事が田辺に手錠をかけた。

「ねー、俺の殺害の件がぜんぜんチェックされてないんだけど、ね、それでいいの?ねえってば」
楽太が口を尖らせたが男は無視してまた声を張り上げた。

「あと、最後に一言言いたい!エレガントな答えを要求するなら、出題もエレガントであれ!」

「ん?それは、誰に向けた言葉?誰に言ってるのかな?」
天王寺は首を傾げた。

「……『あ』がつく二人ですよ」
男は、ニヤリと笑った。

皆、ぞろぞろと舞台から消えていき、一人残ったのは安楽椅子探偵だった。

「まさか、私が『置いといて♪』になるとはな……」

幕が静かに降りてきた。

8安楽椅子探偵ON STAGE 妄想捏造編

8カーテンコール

幕があいた。
舞台には、劇団のメンバーがずらりと勢揃いし、劇場は観客の生ぬるい拍手に包まれた。

「いかがだったでしょうか?安楽椅子探偵ON STAGE・田辺犯人編 。映像ではなく、舞台でお届けしました。江坂犯人説に納得がいかないあなたに贈る季節はずれの真夏の夢……真冬の悪夢かもしれませんね……」
観客からは失笑が漏れた。

にこやかに裸探偵役の俳優が笑った。
谷原章介だった。

観客席では拍手に紛れてひそひそ話が聞こえてきた。

「一からトリック考えて、推理ポイントが、分かるか分からないかの絶妙な配分で映像化するのがどれだけ難しいか知らないんだろうなあ」

「ええ。所詮、私達が考えたものを、なぞることしかしてないのにねえ」

「ちゃんとエレガントな答えを出した上でならまだしも、犯人外してる癖に、批判だなんて、お門違いですよ。そんなの痛くも痒くもないですよ」

「悔しいなら、出題編も解決編も作ってみろよ!って言いたくなりますね」

「……でも、楽しんでくれてますよね」

「……ええ、きっと楽しんでくれてますよ」

「また作れって言われるんだよね」

「作って欲しいんですよ。なんやかんや言っても」

「たいへんなこと、ちょっとはわかって欲しいよね」

「わかる人はわかってくれてますよ」

「わからない人には……」

「もっともっとぎゃふんといわせる物を作る必要がある。って、ことですかね」

「たいへんだなあ」

「たいへんですね」

作り手はそう言って苦笑するのであった……。

終わり
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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