スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

6爆弾魔を捕縛せよ!

6爆弾魔を捕縛せよ!

「子、曰く、われ十五にして学にこころざす、三十にして立つ、
四十にして惑わず、五十にして天命を知る…………」

寺子屋では、子どもたちの大きな声が響いていた。
論語の朗読である。

「先生、私はまだ、七つなので、学ばなくていいですか」

千代丸が茶化した。
「千代丸、学に目覚めるのは、早い方がいいですよ」

松田は笑いながら軽くかわす。
「孔子よりも偉い人になるかもですよ」

「千代丸、って、名前だけは偉そう」
誰かが憎まれ口を叩いた。
が、千代丸は無視した。名前についての冷やかしは、小さい頃から言われ慣れていた。

千代丸自身も、何故、自分には父親のように○○右衛門ではないのかと、問うたのであるが、「竹姫というお姫様がつけてくれた」としか、言ってくれないのである。特に父親の孫右衛門は、少し苦しそうな顔をするので、いつしか、千代丸も父に聞くのをやめていた。

「だいたい、同心の七男が、どうやったら偉くなれるんだか……」

千代丸は、七つにして、早、将来を憂いていた。でも、それは兄たちのぼやきの受け売りに過ぎなかったのではあるが。

「子、曰く……」
皆は、次々と読んでいく、千代丸もあわてて、一緒に読み出した。




「先生、さようなら」
今日の寺子屋は終いとなった。

「松田どの、寺子屋の師範も板についてきましたな」
「いえ、いえ、浪々の身の私、子どもたちを教えるなど、できない、と思っておりましたが……」

「やってみたら、なかなかに面白い」

住職は松田の言葉の続きを引き取った。
「ええ、その通りでございます。毎日が楽しいです。この職と、この場を与えてくださり、まことにありがとうございます」
「いやいや、こちらこそ、子供達の声が響くのが、何より嬉しいからな」

松田がふと、気づくと、大五郎がまだ残っていた。二人の話が終わるのを待っていたようである。
松田が手にした論語の写本を見つめている。

「大五郎、論語を読んでみたいのかい」
大五郎は大きくうなづいた。
「大五郎、はっきりと所望してみなさい」

大五郎は、はっとした。
「先生、論語の写本を貸して下さい!」
松田は笑った。
「いいですよ」
「先生、ありがとうございます」

大五郎は、受けとると、すぐに駆け出していった。

「あの子は、あの大五郎は、賢い子です」
松田は心の底から感心していた。

「与力の青山様のお子と、聞いております。遠縁の子を養子になさったとか。血筋をひいておるのでしょう、のみ込みが実に早い。何事も一心不乱。さすがですな。何となく、遠慮がちなところと、言葉が遅い気もするのですが、それ以外は申し分ない子です」

「ああ、あの大五郎には、ちと妙な噂があっての。狼の子と。でもそれは、噂にしか過ぎんがの」

松田はそんなことには頓着しなかった。

「まさか、あの拝一刀の?人斬りの息子だと?まさか、そんな修羅場を生きた子は、あのように、朗らかな子には育ちませんよ」

と、一笑した。

7爆弾魔を捕縛せよ!

7爆弾魔を捕縛せよ!

北町奉行所は、大騒ぎとなっていた。
真昼に池で爆音とともに水柱がたったのだ。幸い、怪我人は出なかったのであるが、驚愕の投げ文が奉行所に投げ込まれていたのだった。

そこには、池での爆発と先の古寺の犯行が火付けであることを告白する文面が書かれていたからである。

「ちきしょう、なめた真似しやがって」
兵助が憤る
「やっぱり、単なる不始末じゃなかったんですね」
と、一郎太も続ける。

「それにしても次の火付けの予告までするとは」
八兵衛が唸る。

「それに、単なるいたずらじゃねえのか」
「そう、そう」

磯貝と源吾が少し気まずそうにしながらも去勢をはる。

孫右衛門は、じっとその文面を見つめて黙ったままだ。
「孫さん、何かしら感じてることがあるんじゃないですか?」

八兵衛が、水を向けたが、それを磯貝が遮る。

「孫右衛門は、ことなかれ主義だからな。面倒なことになったなあ。と、感じてるだけだろう。それにお前さん、最近、内職どころかさぼってること多かったよな。たるんでるんじゃないか?」

「えー、そ、それは、磯貝さんが思ってることだし、し・て・ることでしょう!」
と、またまた兵助が憤慨した。

「兵助さん、落ちついて、落ちついてください。怒りを向ける方は、こいつです。これを書いた奴でしは」
一郎太が、文を指さしなだめた。

孫右衛門が投げ文を改めて読み直した。

「先の古寺の火付け、池での仕業は我らの決起の証なり。千代田のお城が燃える日近し。まずは、汝ら、気をつけたし。世直し組」


孫右衛門は、静かに言った。

「ふざけた野郎だ。まったく!」
一郎太が唸る。

「組ってことからするに、罪人は一人じゃないってことでしょうか。そして、次の狙いは、この奉行所かと思われます」
孫右衛門は冷静だ。

「あの古寺の燃え方も、単なる火付けにしては酷かった。何か爆薬を仕掛けたんではないかと思うんです。孫さんは自分でも火薬玉作るから分かるでしょ」

「ああ、その通りだよ、八兵衛さん」
と、孫右衛門は答えた。

「てめえら今まで何やってるんでい。火薬を扱う場所をしらみつぶしにあたったのかい?」

それまで黙って聞いていた青山がやっと口を開いた。

「いえ、実はまだすべてというわけではありませんが、色々あたっています……」
と、孫右衛門が口を開いた。

「あら、珍しい!楊枝作らずに消えてると、思ったら、探索してたんだ」
源吾が驚いた。

「火薬が盗まれたとかなくなったというところは、調べた限りではありませんでした。……」

「では、ひょっとしたら、作ってるってことかもしれませんね」
八兵衛が静かに言った。

「火薬をこそこそ作ってるって、この広い江戸のどこを探せってんで。全く……」
磯貝が首を傾げる。

「……物じゃなくて、人だ」

「は?人?」

「火薬の知識を持ってる者、扱ってる所で不穏な動きをしている奴や消えた人間。片っ端しから当たってきやがれ!文など送ってくる野郎だ、自分には力があるってことをみせたいんだ。何かしら態度に出てるだろうさ」

「なるほど、さすが、青山様!」
磯貝が頷いた。

「感心してる場合かい?磯貝よ、そんなにのんびりしてると、いちばん先に吹っ飛ばされるかもよ」

磯貝は、自分の頭が胴体と離れてぴゅーと、吹っ飛んでいくところを想像して震えた。
「そ、そんな、青山様!」

「とっとと調べてきやがれ!」
青山の一喝に同心たちは弾けるように出て行くのであった。

孫右衛門がその場に残った。
「青山様、ご報告があります」

8爆弾魔を捕縛せよ!

新・八丁堀の七人

その八


飲み屋の二階で、数名の男たちがご機嫌で酒を飲んでいた。

「いや、愉快だったな」
「ああ、誠に痛快。南町の奴ら慌ててたな」
「次は、北町だ。あの青山って奴はいけすかない、あいつの慌てた顔も見たいものだ」
「お前の火薬玉は凄い威力だな」
「ふふ、千代田のお城を燃える日も近いよな」

口々に酒を酌み交わす男たち。
その中には、松田悟之新もいた。

「どうした悟之新、浮かない顔をして。今のところ、首尾は上々じゃないか。お前がいちばんに幕府を恨んでたじゃないか。これからもっと面白くなっていくって時に」

「ああ、そうだ。恨んでるさ、理不尽な理由で、家が取り潰しになった。その恨みは、その元凶であるてっぺんの幕府にぶつけるまでさ」

悟之新は、酒をあおった。

「ここにいる、皆、そうだろう、幕府に恨みつらみを持つ奴ばっかりだ。幕府を倒して、世直しをするってのが俺たちの志し」

「ああ、そうともよ」
男は、そう言いながらも、男は、松田の方を見ずに他の男たちと、目配せをした。

「悟之新、でも、その顔はなんだ。不愉快そうだな」

「……別に……愉快だよ」

「お前、ひょっとしたら、ガキ相手のままごとで、腑抜けになっちまったんじゃないのか?」
男はからかうように言う。

「何だと?!」
悟之新は杯を置き、立ち上がった。


「皆様、声が大きいですよ。誰かが聞いてるとも限りません」

男たちの中ではいちばん年下の男が争いになりそうなところを止めた。
しかし、その声には、何の抑揚もない。

「おい、本当にお前の作る火薬玉の威力は凄いな。お前、まだ、二十歳にもなってないだろ、若いのに凄腕の花火職人だって聞いたぜ。なんだってまたそんないい職人が幕府転覆なんて阿呆みたいなこと思うんだい」

「今までのところは、単なる脅しなだけです。火薬の量も仕掛ける場所もたいしたことはありませんし」

と、言いながら、その年若な男は、悟之新の方を鋭い目で見返した。
が、それは一瞬のことで、問われ男に向き直り、答えた。

「理由なんていいじゃないですか。私は、ただ、なあんにもない空の上に打ち上げる花火には、飽きてしまったのです。何かしら、地上にあるものを燃やしてしまいたくなったのです。なら、いちばん、大きな物を燃やしてみたいじゃないですか」

口調は楽しげだが、その元花火職人の男の目は笑ってなかった。

「あはは、面白い奴だな、貴様は。もっと飲もう」

「酒は結構です。それより、悟之新殿。あなたには、もう一働きしてもらわねばなりません」

他の男たちは怪しい笑顔で悟之新を見つめていた。

9爆弾魔を捕縛せよ!

新・八丁堀の七人
その九

松田悟之新は浮かない顔をして、寺子屋
で教えていた。

「先生、なんか元気がないね」
おさよはいち早く気づいた。

精細を欠く授業が終わり、悟之新は千代丸たちに声をかけた。

「ちょっと、私の家で手伝いをしてくれないかい」

「いいよ!」
三人は喜んで、悟之新にまとわりつき、連れだって帰路についた。

しかし、悟之新は、長屋へ向かわない。町からそれ、むしろ山道へと向かっている。

男子二人は気にも止めなかった。むしろ、寺子屋で座っているよりも、山道を歩く方が楽しいくらいであった。

「いちじく にんじん さんしょ に しいたけ ごぼうに……」

と、大五郎が数え歌を歌う。
「大五郎って、赤ちゃんみたい」

と、言いながら、千代丸も合わせてうたう。
「……むぎまんま、ななくさ、やつめ、きゅうりにとんがらしぃ」
二人は笑いころげた。

しかし、おさよは少し心細くなった。

「先生の家の方角と違うんですけど」
「家へ帰る前にちょっと寄り道をするだけだ!」

いつも柔和な松田の顔とは一変しており、言葉もきつかった。

「先生、どうしたの?」
「何でもない」
いぶかしがるおさよの手をぐいぐい引っ張った。

「寄り道、寄り道」
やはり、千代丸は気にもしていない。

大五郎は、悟之新の険しい顔を見て、一瞬ひるんだ。
しかし、おさよと千代丸の二人を見直し、何かしら心に決めたように、三人の後をついていった。

悟之新は山小屋がみえると、中に入った。

「先生、ここで何のお手伝いをするの?」

「……ここにいなさい。ここでじっとしてくれるのが……そう手伝いです。手伝いなのです。」

「変なの、先生!何にもしないのが手伝いだなんておかしいよ」

と、千代丸は笑ったが、悟之新の厳しい表情にその笑いは消えていく

「先生、本当にどうしたの?」


 「世直しのためなんだ……」

悟之新は、包みを置いて、三人を置いて小屋を出た。

「変なの先生」

千代丸は、悟之新の後を追おうとして戸を開けようとしたが、開かなかった。

「え?どういうことだよ」
「分からないの?私たちは閉じ込められたのよ!」
「閉じ込められた?なんでだよ」
「それは分からないわよ」
「なら、分かってないじゃないか!」
「ぎゃあぎゃあうるさいわよ」
「どっちが!」

千代丸とおさよの言い争いなど気にせず、大五郎は包みを開けた。隅に置いてみかんと饅頭である。水筒もあった。

「食べてもいいのかな」
思案している二人をよそに、大五郎は饅頭にかぶりつく。
悟之新は一筆残していた。

「すぐに帰すから、待っていてくれ、悟之新」

10爆弾魔を捕縛せよ!

新・八丁堀の七人
その十


千代丸らが松田悟之新にかどわかされた2、3日前に話はさかのぼる。


八丁堀の同心たちは、孫右衛門からの話を聞いていた。

青山の見込み通り、精吉という腕利きの花火職人が、突然消えていたのである。

「そんなに優秀な花火職人なのに、突然消えちまうとはな、怪しい。とっつかまえて吐かしちまおう」
源吾がまくしたてる

「乱暴だなあ」
一郎太が小声でつぶやく。

精吉については、まだ話が続くと、孫右衛門は言った。

「この花火をつくる場には、女が、まだ、幼い精吉を連れて来たというのです。色んなところで働いていたそうなのです。働き者で、そして何より火薬のことを良く知っていたそうです」

「精吉は幼い時から、その中で育ったから、花火や火薬のことについては、知識も技能も誰より優れていた。ってことですか?」
と、一郎太。

「ああ、そうだ。しかも、人をひきつける力もあったようだよ。いつも精吉の周りには人が集まっていたようだった。花火職人の棟梁は、娘の婿にして、精吉に譲ろうと思ってたらしい」

「何故だ?そんなに居心地の良い職場からいなくなったんだろう」
兵助が首をひねる。

「いちばん中の良かったひとりの職人にあたってみたんだが、その男も腕を悪くしていてね、少し前にやめていたそうなんだ。その男をやっと探しあてることがてきたんだ」

色々聞くことができた。と、孫右衛門は静かに話しを続けた。

「精吉が、真夜中に火薬玉を見てたそうだ。暗い顔つきで、『父上と、おっかさんの思いは私が果たします』というのを聞いたそうなんだ。『千代田のお城に向けて花火あげましょうかね、大きい玉を打ち上げますよ。でも、失敗したら、千代田のお城燃えて大変だろうな』と」

「その時は、その職人は気にもしなかったという。が、父上、という言葉がなんだか町民の子が使う言葉じゃないと、ひっかかったといっていた」
 
「精吉の素性が知りたいもんだな。」
磯貝が言う

孫右衛門が一呼吸置いてから一気に言った。

「その職人は両親の名前を聞いていました」

「母はお妙」

「ま、まさか」
「そんな馬鹿な!お妙は死んだはずでは!」
「なら、その精吉は!」
同心たちに緊張感が走る。

「ああ、父親は精一郎」

「あ、雨宮精一郎だと!」


お妙は八兵衛の女房であった。しかし、死んだと思われていた雨宮精一郎が生きていたことからお妙は雨宮の元へと戻った。雨宮は幕府転覆を狙っていた。しかし、八丁堀の七人がそれを阻止した。雨宮とお妙は火中焼け死んだのだった。

※八丁堀の七人 第2シリーズ8・9話
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

最新記事
カテゴリ
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ
FC2 Blog Ranking

検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。