7安楽椅子探偵ON STAGE 妄想捏造編

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「田辺さん、あなたは、コートの衣装を着ていましたよね。芝居が終わったというのに、ジャージに着替えてはいませんでしたよね」
男は、脱いだ服を着ながら言った。

「はい。金山さんに、台詞少ないのに噛んじゃダメだと、指摘されました」

「田辺さん、あなたのバスケットは三咲さんが持っていったとはいえ、そんなものは必要ありませんでした。あなたは、コートの下にペンキとドライアイスを隠して持っていったのです」

「田辺さん、あなたは、私のように裸にはなれないはずだ。なぜなら、あなたの肌には、隠したドライアイスで低温火傷をした跡がついているはずです。そして、おそらくはペンキも!」

そう言って、裸探偵は、田辺の上着を捲りあげた。

果たして、そこにはペンキと火傷の跡があった。

「田辺……風呂に入らなかったのか?」
平野が泣いた。

「バカだねえ、田辺、ドライアイスはドライアイスは……ポケットに入るじゃないの。なんで脇腹なんかに挟むのよ!」
長田もすすり泣いた。

「舞台やってる最中なんか、風呂なんかに入ってる暇なんかないっすよ!金山さんならわかってくれますよね!老眼の金山さんなら」

「いや、そこは老眼は関係ないよね。関係なくない?『スタッフだからわかってくれますよね』だよね?」

「ペンキの跡は風呂で綺麗になるとして、火傷の痕は隠せませんね」

「こんなもの証拠にならないわよ!殺害の時の、ドライアイスのせいで火傷になったかどうかだなんて、誰にもわからないわ!私が犯人だって言ってるじゃないのー。」
江坂がわめいた。

「そうだ、そうだ」
刑事も後押しした。

「でも、江坂さん、証拠うんぬんは、あなたにもあてはまるんです。消去法であなたにたどりつき、あなたは自供しましたね。だが、あなたが犯人である『証拠』はなかったはずだ……あなたが自供しただけだ。私は裸になることで田辺さんの心を開き自供を導いた。同じことではないでしょうか」

「そ、そんな幕引きなの?ありえないわ、こんな解決編!この犯罪は美しくない。エレガントじゃないわ、決して、決してエレガントじゃない!」
そう言って、今度は江坂が崩れ落ちた。

「田辺空彦、中崎兄弟殺害容疑で逮捕する。後は署で詳しく聞かせてください」
刑事が田辺に手錠をかけた。

「ねー、俺の殺害の件がぜんぜんチェックされてないんだけど、ね、それでいいの?ねえってば」
楽太が口を尖らせたが男は無視してまた声を張り上げた。

「あと、最後に一言言いたい!エレガントな答えを要求するなら、出題もエレガントであれ!」

「ん?それは、誰に向けた言葉?誰に言ってるのかな?」
天王寺は首を傾げた。

「……『あ』がつく二人ですよ」
男は、ニヤリと笑った。

皆、ぞろぞろと舞台から消えていき、一人残ったのは安楽椅子探偵だった。

「まさか、私が『置いといて♪』になるとはな……」

幕が静かに降りてきた。
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ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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