5凧、凧、あがれ!


その五~源太~

夜明け、大五郎と涼次は、入り口の戸を叩く音で目覚めた。からくり屋の源太が、すまなさそうな顔をして立っていた。
「なんでぇ、何事だ?」
「涼次さん、すまねえ。おいら、ちょっと風邪ひいちまって。店、手伝ってくれるとありがたいんだけど」
からくり屋の源太とはいえ、彼のいう店とは、小料理屋のことである。死んだ恋人の店をその息子・作太郎とともに営んでいるのである。
「しようがねえなぁ。まあ、今日は仕事もないし」
涼次は大五郎の顔を見た。
「大五郎、お前も行くか?」
「うん」
大五郎は、明るくうなづいた。

「おっと、大五郎、これ。俺の古着を仕立て直したんだ。ゆうべ夜なべして作ったんだからな!着ろよな!」
涼次はぶっきらぼうな口調で大五郎に着物を差し出した。一枚の着物を仕立て直したのではないようだった。何枚かの着物を切って、繋ぎ合わせて一つの着物を作ってある。手の込んだ品であった。
「興が高じただけだから」
涼次はぼそりと念をおした。
大五郎は思いがけない贈り物に驚いた。涼次の顔をしっかりと見つめて礼を言った。
「ありがとう」
一言、一言に思いをこめる大五郎であった。
「おう!」

しゃがれて、かすれた咳をしながらも、源太は聞かずにはいれなかった。
「この子、誰ですか?あ、ひょっとして隠し子?」
「違う」
めんどくさそうに、涼次は答えた。
「ええ?だって、着物まで作ってやるなんて、信じられない」
「作りたくなったから、作っただけだ。くだらねえこと言ってると、手伝いなんか行ってやらないぞ」
「ああ、はい、はい、お、お願いします。余計なことはいいません」
大五郎は二人のそんな様子をみながら微笑んだ
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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