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4凧、凧、あがれ!

拝大五郎・外伝「凧、凧、あがれ!」
その四~涼次~

大五郎は、走る、走る。走り疲れ、歩いた。どこをさまよっていたのか、気づいた時には、夜になっていた。
「ぐぅ~」 と、大五郎の腹の虫が鳴った。その空腹の大五郎に、味噌のいい香りが漂ってきた。 そして、香りとともに、大きな声も聞こえてきた。

「今日は、具沢山の味噌鍋だ。う~~ん、いい香りぃ~。それにしても味噌問屋での、奥の屋敷の襖絵作り。給金もらえて、しかも極上の味噌がお土産たぁ~、ついてるじゃねえか。それに料理人の腕も極上ときてる。さあて、食うとするかなぁ~」
一人言にしては、ずいぶん大きな声である。

楽しげなその声に、思わず耳を傾けた大五郎だった。
が、不意に、大五郎の耳元を何かが、横切った。それは、向かいの家の壁に突き刺さった。

「誰だぁ~?玉櫛か?いいにおいだろ?入って来いよ。食わしてやっから。腹減らしてるのはお見通しだぜ。腹がぐ~ぐ~鳴ってるのが、ここまで聞こえてるぜ。ほらほら、入って来いよ~」
大五郎は、「入って来いよ」のその声につられた。大五郎の右手は家の戸を開けていた。

男が一人家の真ん中で、いろりの上の鍋をかき回していた。

「なんだ、小汚い餓鬼か。玉櫛にしちゃあ小さいたぁ~思ったが。まぁ、いい。食うだろ、食うだろ。まぁ、食わなくてもいいぞ。お~れ~は、食う!」
大五郎の返事も聞きもせずに、鍋からお碗に少量の汁をそそぐ。
「う~ん、いい味!絶品、絶品」
一人味見をしながら、悦に入る男である。

大五郎の目に飛びこんできたのは、鍋ではなかった。大きな絵であった。そして、絵の具と筆。おそらくはその男が描いたのであろう。大きな絵だった。 天女の絵に竜の絵、虎の絵。

大五郎は躊躇した。自分の着物が泥に汚れていることを気にしたのだ。
大五郎は、一端、ぺこりとお辞儀をすると、家を飛び出した。
大五郎は、着物の泥をはたいたが、全部はぬぐいきれない。
ぱたぱたという物音をいぶかしがり、男が大五郎の様子を見に来た。
「そんなこと気にしたのか?ひょっとして、絵が汚れるとでも思ったのか?」
大五郎は、大きくうなづいた。

男は、大五郎の頭を大きな手でがしりと掴んだ。
「大丈夫だから」

二人は鍋を囲んだ。男のそばに大五郎はちょこんと座り、手をあわせた。
「さあ、食べるぞ。煮つまったら、煮つまったで、上手い。だが、香りが飛んじまう。早く食うぞ」
「おれは、経師屋の涼次って言うんだ。襖絵や掛け軸描いたり、作ったりしてるんだ。まぁ、そんなことはいい。熱いうちがうめえんだ…あう、あう、あつっ!」
涼次は具を口にいれたが、熱すぎたためにのた打ち回った。
「あ、あつぅ~、また、この豆腐。と、豆腐が、の、喉を~~!」

大五郎はそんな涼次を見て、声を出して笑った。
「笑うなよ~。ほんとに熱かったんだから~」
涼次は大五郎に泣き笑いのように笑みをかえした。

涼次も大五郎もひたすら食べた。
涼次はその後はしゃべりもせずに、ちらちらと大五郎の様子を見るだけであった。しかし、大五郎の碗が空になったと見て取ると、さっと、おかわりをついでくれる気遣いをするのだった。

満腹になった二人だった。
「泊まって行くだろ」
涼次が声をかけた。
大五郎はうなづき、小さく言った。
「……大五郎……」

頭を下げる大五郎のその仕草に、涼次は、もう一度大きな手で大五郎の頭を掴んだ。
「そっか、大五郎というのか。いい名だ」

大五郎は涼次のそばで、すぐ眠りに落ちた。
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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