3凧、凧、あがれ!

拝大五郎・外伝「凧、凧、あがれ!」

その三~八兵衛~

大五郎は、番屋の前でこわばっていた。 自分がおたずねものになっていたことを知っていた子である。 大五郎は後ずさりし、きびすを返した。だがまたしても、大五郎は男にぶつかって尻餅ちをついた。 今度は大五郎は、躊躇せずにすばやく立ち上がった。

「おおっと、ごめんよ。痛くなかったかい?」
その男は、穏やかな口調で大五郎に微笑みかけ、背をかがめ大五郎に声をかけた。
大五郎は小さくうなづいた。が、男は大五郎の腕から血が出ているのに気がついた。着物も、ずいぶん泥で汚れている。腕だけでなくあちこちすりむいているようだ。
「こりゃあ、いけねぇ。あちこち怪我してるじゃないか。弥生先生のとこいって、薬でも塗ってもらわねえと」
男は、大五郎の腕をとったが、大五郎は「痛くない」と、その腕をふりほどいて、男の前から逃げ去った。

「あ、八兵衛さん、今日は非番ですか?」
番屋から岡っ引きの徳松が顔を出し、その男に挨拶した。
「ああ、天気もいいので、ちょいと、こいつをあげようと思ったんだが、糸が切れちゃって、ざまあねえな」
男は糸の切れた凧を持って、小さく笑った。

その男、名を仏田八兵衛(ほとけだ・はちべえ)北町奉行所の同心である。同心の月給では心元なく、凧作りの内職をしている。
八兵衛は、大五郎が走り去った方角を少しながめていた。
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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