15凧、凧、あがれ!

その十五~金四郎~

「青山様と拝一刀にはそんなつながりがあったんですか」
孫右衛門が感慨深そうにうなづいた。
「ところで、青山様は今日もまた休み? 」
「いや、青山様は大五郎につきそって、お白洲です」


大五郎は青山久蔵に付き添われて、お白洲にて、北町奉行・遠山金四郎の沙汰を待っていた。
「北町奉行遠山左衛門尉様、ご出座~」

「これより拝大五郎について吟味を致す、一同の者面を上げい」
大五郎は、遠山の顔を見据えた。
「さて拝大五郎、父・拝一刀とともに刺客の道に落ち、残虐非道に多勢の人の命を奪いとってきた、とある。相違無いか」
「はい」
大五郎は小さな手を二つ並べて差し出した。
「ほう、お縄になるというのだな。自ら出頭する心がけまことに殊勝である」
久蔵が口を開いた。
「年端もいかぬ子供でございます。なにとぞご慈悲を」
「わかっておる。ここに上様直々の書状がある」
「なんと」
久蔵は驚いた。

「拝大五郎、父・拝一刀の罪はその死にて終わりを告げた。拝大五郎が父とともに同行したのはやむを得ぬこと。よって咎なしとする」
書状を遠山が威厳を持って読み上げた。が、すぐにその口調はくだけたものになった。
「心配すんな大五郎。お上のお慈悲が出たんだよ。おめえは無罪放免なんだ。逃げ回らなくても良いんだぞ」

しかし、大五郎は首をふった。
「殺した」
「大五郎、そなたの罪は問わぬのだ」
「殺した」
大五郎はうつむく。
「殺した」
大五郎の頬から一筋の涙が流れた。顔をあげ、遠山の目をみつめながら、そう告げる。
「殺した」
そう言って、こぶしを握った両手を高くあげた。
さすがの遠山も絶句した。

「大五郎、そなたは父の罪は自分の罪。罪を償うというのだな」
久蔵は、大五郎に向かって言うと、大五郎はうなづいた。
「わかった。その罪、そなたの命をもって償え。そこになおれ、大五郎」
大五郎は目を閉じ、久蔵は刀を抜いた。
「馬鹿野郎! 何をする! 青山、貴様、血迷うたか! 」
遠山が声を荒げた。


「御免! 」
皆が止める間もなく、久蔵の刀が大五郎に向かって振り下ろされた。


遠山は思わず目を閉じた。その目をおそるおそる開ける。
その視線の先には、大五郎の頭の髷だけが落ちていた。

「大五郎、昔のおめえは、今、死んだ。この髷がその証だ。今、おいらの目の前にいる、この大五郎は新しく生まれ変わった大五郎なのだ。皆、おめえが生きていくことを望んでいる。拝一刀、お前の父親も、おめえが生きることを望んでいるんだ! 生きるんだ、大五郎! 」
久蔵は、大五郎の肩を力強く掴んで言う。

「い、き、る……」

大五郎は、涙で潤んだ目で久蔵をみつめた。父親の一刀の瞳、頑固でまっすぐな拝一刀の瞳に良く似ていた。

「そうだ、大五郎、生きるんだ。大五郎、おめえは、今から、いっぱい笑うんだ。いっぱい泣くんだ。怒ってもいい、すねてもいい…おいらにな、みんなにな、いっぱい、いっぱい、甘えればいいんだ。それが、おめえの償いだぜぃ。できるよな、大五郎」
久蔵は大五郎の肩を優しく叩いた。

「うん! 」

大五郎は青山に向かって大きくうなづいた。
そして、遠山の前を向いて深々とお辞儀をした。頭を上げたその顔には、もう涙はなかった。

「大五郎といい、青山といい、何というものを見せるのだ。それにしても今日は1本とられたな。おい、青山、ちょっといい格好しすぎじゃねえのかよ。俺の見せ場をとるんじゃねえよ」
遠山も笑顔だった。青山の策略をすでに知っていたかのようなその笑顔がひきしまり、真顔となる。


「これにて、一件、落着! 」
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

最新記事
カテゴリ
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ
FC2 Blog Ranking

検索フォーム
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR