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12凧、凧、あがれ!

その十二~青山邸にて~

夜更け、大五郎が青山邸にて眠りに落ちている頃、話を聞きつけて八兵衛がたずねてきた。少し肌寒いが縁側に腰を下ろした久蔵と八兵衛の二人である。

「拝一刀の息子、大五郎。武士の子だったんですね。飯を食べる佇まい、手をあわせ背筋を伸ばし、その様子がとてもきれいだったんです。立居振舞が町民の子とはちと違うとは思ってたんですが。しかし、父親が死んだ今も、自分はお尋ね者だと思って逃げ回っているのでしょうか」

「見ろよ、八兵衛、月がきれえじゃねえかい」
問いには答えずはぐらかすようなそのもの言いに、八兵衛は少しむっとするが、久蔵と同様に視線を月に向けた。月の光はやわらかく二人を照らしていた。
「それにしても、こんな可愛い子を連れての刺客の旅だなんて、あんまりだ。残酷な修羅場ばかり見てきたんだろうな。かわいそうに」
八兵衛の視線はおのずと、月から大五郎が寝ているであろう奥の部屋に向かう。

「なぜ、子を連れてか?」
無視されると思ったその問いに久蔵は答えた。

「父には子が必要だったんだよ」

「たぶん、その道中で大五郎が死んでいたら、拝は刺客をやめただろうぜ。きっと腹切って死んでいたさ」
断定とも思われる言葉に、八兵衛は反論する。
「拝は非道な男ですよ。復讐のためにだけ生きてるような男と聞いています。殺戮のひどさは、あれは人間じゃない。鬼ですよ。これまで何人殺してると思いますか、一族が滅亡するぐらい殺してるんですよ。たとえ、子が死んでも、己は…、己の魂を烈堂だけを殺すためだけに燃やしたと思います」
八兵衛は熱くなる。久蔵の言葉の続きを聞こうと身構えた。
「拝の野郎め…。心技体すべてにおいて秀でた男がなぜ刺客の道に身を落としたのか。いや、武士の中の武士だからこそ、己れを捨て鬼となったのだろうな」
拝の<野郎>、その言葉に八兵衛ははっとする。

「青山様、まさか、知ってるんですか」
「ああ、昔、若ぇ頃にな。一度立ちあったことがある」
「なんですって、拝一刀と! で、どっちが勝ったんですか? 」

「昔のことは忘れた、忘れた。ああ、酔いが回ってきた。さて、おいらは横にならせてもらうぜぃ」
勢いこむ八兵衛をまたもはぐらかし、久蔵は体を横たえた。
「ああ、本当にいい月夜じゃねえか~」
「ちょっと、青山様。その話もうちょっと聞かせてください。青山様。言い出してやめるって、それはないでしょう、青山様、ねえ、青山様。ああ、もう、この人は武士の皮をかぶった、ただの飲兵衛だ」

月を見ることなくいびきをかき始めた久蔵に、八兵衛は毒づいた。
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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