9爆弾魔を捕縛せよ!

新・八丁堀の七人
その九

松田悟之新は浮かない顔をして、寺子屋
で教えていた。

「先生、なんか元気がないね」
おさよはいち早く気づいた。

精細を欠く授業が終わり、悟之新は千代丸たちに声をかけた。

「ちょっと、私の家で手伝いをしてくれないかい」

「いいよ!」
三人は喜んで、悟之新にまとわりつき、連れだって帰路についた。

しかし、悟之新は、長屋へ向かわない。町からそれ、むしろ山道へと向かっている。

男子二人は気にも止めなかった。むしろ、寺子屋で座っているよりも、山道を歩く方が楽しいくらいであった。

「いちじく にんじん さんしょ に しいたけ ごぼうに……」

と、大五郎が数え歌を歌う。
「大五郎って、赤ちゃんみたい」

と、言いながら、千代丸も合わせてうたう。
「……むぎまんま、ななくさ、やつめ、きゅうりにとんがらしぃ」
二人は笑いころげた。

しかし、おさよは少し心細くなった。

「先生の家の方角と違うんですけど」
「家へ帰る前にちょっと寄り道をするだけだ!」

いつも柔和な松田の顔とは一変しており、言葉もきつかった。

「先生、どうしたの?」
「何でもない」
いぶかしがるおさよの手をぐいぐい引っ張った。

「寄り道、寄り道」
やはり、千代丸は気にもしていない。

大五郎は、悟之新の険しい顔を見て、一瞬ひるんだ。
しかし、おさよと千代丸の二人を見直し、何かしら心に決めたように、三人の後をついていった。

悟之新は山小屋がみえると、中に入った。

「先生、ここで何のお手伝いをするの?」

「……ここにいなさい。ここでじっとしてくれるのが……そう手伝いです。手伝いなのです。」

「変なの、先生!何にもしないのが手伝いだなんておかしいよ」

と、千代丸は笑ったが、悟之新の厳しい表情にその笑いは消えていく

「先生、本当にどうしたの?」


 「世直しのためなんだ……」

悟之新は、包みを置いて、三人を置いて小屋を出た。

「変なの先生」

千代丸は、悟之新の後を追おうとして戸を開けようとしたが、開かなかった。

「え?どういうことだよ」
「分からないの?私たちは閉じ込められたのよ!」
「閉じ込められた?なんでだよ」
「それは分からないわよ」
「なら、分かってないじゃないか!」
「ぎゃあぎゃあうるさいわよ」
「どっちが!」

千代丸とおさよの言い争いなど気にせず、大五郎は包みを開けた。隅に置いてみかんと饅頭である。水筒もあった。

「食べてもいいのかな」
思案している二人をよそに、大五郎は饅頭にかぶりつく。
悟之新は一筆残していた。

「すぐに帰すから、待っていてくれ、悟之新」
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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