2爆弾魔を捕縛せよ!

新・八丁堀の七人・爆弾魔を捕縛せよ!

その二

寺社の中では十人ほどの子どもが熱心に書き初めをしていた。和やかな中にも、心地よい緊張感がそこにはあった。

大きな背を小さく丸めて、松田悟之新は子らの文字を見て回っていた。

孫右衛門も七男・花田千代丸もその中にいた。
「千代丸、お前の文字は豪快だなあ」
初日の出と書かれた文字は半紙からはみ出しそうに大きい。

二、三人の子どもたちが千代丸の文字を覗きにきた。
勢いはあるが、なかばやけくそのような文字に子どもたちは笑った。
「こらこら、人のことより、自分の文字に集中しなさい」
「はい!」
子どもたちは、素直に席に戻り、寺子屋の中は、また静かになる。

当の千代丸は笑われたことなど、ちっとも気にしていない。
書き上げた半紙を高々と持ち上げ、少し誇らしそうにするのだった。
「千代丸、勢いがあなたの良さだが、次は、もう少しゆっくり書いてごらんなさい。そして、墨の黒と半紙の白を見てごらんなさい。白い部分が多くなると良い加減になると私は思いますよ」

「小さく書け」
とは決して言わない松田である。千代丸は、そこが気にいっていた。誰かの文字と比較することもない。
千代丸は素直に「はい」と答えるのだった。

家ではやんちゃばかりの千代丸だが、寺子屋ではおとなしかった。孫右衛門がみたら目を丸くするような素直さだった。

「あ、大五郎、ここの部分は素早く書いてごらん。そうすると勢いがでる。筆は立てて、背中は丸めず、背中も立てて、そうだ、上手いぞ、大五郎は筆をもう少し落としてごらんなさい。太い文字が書けますよ」

青山大五郎。青山家の養子となった拝大五郎である。大五郎は、ふう、と大きく息を吐き、筆を置いた。

見上げると、松田の笑顔があった。大五郎は、次の半紙を取りだし、一心に書き始めていく。
指摘した点を的確にこなしていく大五郎に、
この子はなんと吸収が早いことか!と、松田は思った。
大五郎の文字の上達ぶりには、松田も驚くばかりであった。

「おさよ、おさよは……」
「『申し分ない。上手い』でしょ。先生」
「いっつも、そればっかり。それしか言ってくれないんだもの。物足りないです。先生。」

「そ、そうか、すまんな」
松田は思わずたじろいだ。おさよは、松田が次の言葉を言うのをさえぎった。
「何か難しい文字を教えて下さいませんか?」
松田はわかったと、おさよに課題を与え始めた。

寺子屋の中が少しざわめいた。

千代丸は大五郎の背中をつついた。
「また、だよ。嫌な奴。ああ、高慢ちきってあいつのことを言うんだと思うな」
大五郎は少し首をかしげただけで、千代丸に背中を向け、また、書き始めに集中した。

「大五郎は真面目だなあ」

千代丸は斜め前のおさよを見て舌打ちをして、「こうまんちき」と、書いてくしゃくしゃと丸めるのだった。
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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