17狙われた看板娘

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 池のほとりで、八兵衛はあの紙を見せた。

 おみつは、声を絞り出すようにして、話し始めた。

「あの日、お雪ちゃんはうれしそうな顔をしていました。手紙の返事を書くんだって」

池の水がさざなみを打って、おだやかに日の光を反射していた。

「私にはわかってました。相手が誰だか。政吉さんです。私は、お雪ちゃんがとても憎らしくなりました。お雪ちゃんは、何でも持ってる。幸せいう幸せは全部手に入ってる。大店の娘で、評判の店に、単に、奉公に来ているだけ。家に帰れば、両親はそろってて、何不自由なく暮らせるのに」
 
太陽に雲がかかり、湖面も暗くなった。おみつの顔も翳ったが、醜くゆがんだように八兵衛にはみえた。

「火鉢を片付けようとしていたのに、狭い店の中で、『筆だ、硯だ』なんて、嬉しそうにするお雪ちゃんが、憎らしくなって……。お雪ちゃんを邪険につきとばしたんです。『ちょっとどいて。』そういう加減のつもりでした。でも、私の腕にはものすごく力が入ってしまっていたんです。お雪ちゃん、柱に後ろ頭をぶつけてしまって……。なんでもないようにみえました。
でも、手紙を書き出した途端、手紙が、机から落ちました。そして、お雪ちゃんは、うめいて椅子から転がり落ちて、それきり動かなくなったんです」
おみつは、顔を覆った。

「医者を呼ぼうとしました。でも、それを政吉さん、いえ、政吉に見られてしまったんです」

「政吉は、盗人の仕業にみせかければいい。俺は黙っておくからといいました。かばってくれてるのかと思いました。だって、お雪ちゃんとは、もう別れたいんだ。お前のことのほうに惚れてたんだ。なんて言うから。私はその言葉を信じてしまったんです」

おみつは、嗚咽をもらした。

「そう言うのを聞きながらも、私は、お雪ちゃんが書いた書こうとしていた手紙を、政吉の目から隠すようにしていました。」

「おみつ、おめぇ、政吉にも惚れたから、お雪に取られたくなかったんだ。独り占めしたかったんだよな……」

八兵衛の言葉に、おみつは、大声で泣き出した。

テーマ : 時代劇
ジャンル : テレビ・ラジオ

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ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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