その二 少年と盗賊 

八丁堀の七人 少年と盗賊

その二

「ははは。食ってないって。おいらは何にもしてない。あんたが追っかけて来たから逃げただけさ」
挑発するような口調である。しかし、一郎太は笑顔をみせた。
「さあ、謝りに行くぞ。許してもらえるかどうかは、お前の態度次第だがな」

「捕まえないんだ。そうだよね。盗んだ証ないからね」
面食らいながらも、少年は言葉を返した。

「私は見た。それが、証だ。それとも、番屋に行く方がいいのか。じゃあ、番屋に行こうか」

一郎太は、少年の手首をぐいと掴んだ。
しかし、笑顔は相変わらずで、凛としており、少年は、一瞬たじろいだ。
が、その手を振り払って少年は、駆け出した。
 
一郎太は追いかけたが、勢い余って、女の子にぶつかってしまった。

「ごめんよ」





「甘ぇな」

女の子を見送って、自分の着物の裾をはたいて立ち上がろうとした一郎太の頭上から低い声が響いた。

北町奉行所与力、青山久蔵である。
いつものごとく、徳利を肩にぶら下げ、着流しの装いで現れた。

「青山様、すみません」
「ガキ相手に何を遊んでんだ。とっとと番屋に連れて行きゃいいもんを。ちんたらしているから、逃げられんだよ」
「しかし、まだ子どもです。あいつには、改心する機会があると思うんです。親身になって、まずは悪いことは、悪いことだ。と、教えてやらねばならないと思うんです」
青山の鋭い眼光にも負けず、一郎太は言い切った。
「甘えな。おめえも。誰かさんと一緒で、この北町には甘えもんばかりだ」
しかし、青山は、それ以上は何も言わずに立ち去った。



小説 八丁堀の七人
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ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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