その十一 少年と盗賊

八丁堀の七人 少年と盗賊

その十一

暗くなり、芝居小屋に人がいなくなったのを見計らって、兄弟たちは、小屋の片隅に潜り込んだ。そして、箱の陰で芝居衣装をまとい眠った。


小屋主たちが帰ってきた物音に、亀吉は目を覚ました。

「たらふく飲んだ、飲んだ」
「それにしても、江戸の町の連中、特に北町の野郎は間抜けな野郎ばかりだな」
「次はどこの蔵を破りますか?」
「そうさな」
「松田屋に喜久野屋。そして、次は藤野屋の蔵だな。ここがいちばんの金蔵さ。今までのは、小手調べ。藤野屋が本当の狙いさ」

亀吉は息を呑んで聞いていた。 
……まさか、こいつらは、盗人なのだろうか。しかし、すぐに、これは、芝居の筋立てだろうと、考え直そうとした。

……芝居だ。そうに決まってる。だけど、本当に盗人だったら、どうなる。

亀吉は、身を固くした。
……見つかったら大変なことになる

「お兄ちゃん、おしっこ」
鶴吉が、起きてしまった。

「バカ、黙れ。静かにするんだ」
「えー、もれそう」
「もらしてもいい。見つかるよりは」
「えー」

そして、小屋主たちの次の台詞に、亀吉は震えた。

「北町の剃刀、青山久蔵も地団駄踏んでるだろうさ」
「あはは、なにが剃刀だ。どこが切れ者だ!たいしたことねえな」

北町与力、青山久蔵。大五郎の父親。
あの顔の長い同心の言葉が、思いだされた。

「もう、少し働くとしようか」
「ああ、これまでのは、北町の奴らをたぶらかす小手調べ。本当の狙いは別にあるからな」

ちゃらりん、
男たちが、何かを触っていた。
小判のようだった。

……やっぱり、これは、芝居なんかじゃない!こいつら、本当の盗人だ!

衣装ごと、鶴吉を強く抱きしめた亀吉だったが、その瞬間、土間に置いてあった小道具をひっかけてしまった。

がたり。

ほんの小さな音であったが、男たちは、聞き逃すことはなかった。

「おや、ねずみかな?」

すぐに、兄弟たちは、見つかってしまった。

小説 八丁堀の七人
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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