その十八 少年と盗賊
八丁堀の七人 少年と盗賊
その十八
その瞬間、
カキン
と、いう音と、ともに、お頭の刀は弾き飛ばされた。
「誰だ!」
お頭たちが、ひるんだ隙をついて、大五郎は、鶴吉と亀吉の手を取り、盗賊たちから距離をとった。
「北町奉行所である」
磯貝総十郎の大音声が小屋に響いた。
「てめえら、その子どもらをどうする気だい?」
青山の眼光が、凄みをましていた。
「てめえらの薄汚い欲のために、子どもを使うんじゃねえ!」
八丁堀の七人たちは、盗賊たちに、にじりよった。
「父上!」
大五郎が、青山の顔を見て叫んだ。
「旅一座の権蔵とその一味。上方での悪行、書状により明白である。松田屋、並びに、喜久屋の蔵破りについても詮議いたす。神妙に縛につけい!」
磯貝総十郎の声を打ち消すように、お頭が、叫んだ。
「やかましい!やっちまえ!」
お頭は、飛ばされた刀を拾い直して、同心たちに挑んできた。
孫右衛門の煙幕玉が飛び交った。
兵助、源吾、八兵衛、総十郎たちが、手下たちの短刀に、十手で応戦する。
子らは、その中を逃げまくった。
しかし、亀吉が、小道具につまづいて、転んでしまった。
「ちきしょう、裏切りやがって!」
お頭の刃は、今度は、亀吉に向いた。
「危ない!」
一郎太が、自分の身を投げ出した。
一朗太は、一撃目は十手で刀を受け止めた。
が、次の刃は、受け止めきれず、左腕をお頭に斬られてしまった。
「くっ!」
「い、一郎太さん!」
一郎太は、流れる血を押さえようともせず、慌てる亀吉をその腕で庇った。
「お前ら、なんで、こんな薄汚いガキのために、命はるんだ」
お頭は、せせら笑った。
「薄汚いないのは、そっちだろうが!腐って腐りきった悪から、弱い者んを守るのが、私の仕事だ!」
一郎太は、十手をかざしながら、お頭の一撃をかわし、お頭の後ろに、回りこんだ。そして、飛び上がり、お頭の首の後ろに、十手を降り下ろした。
「ぐおっ」
お頭は、崩れ落ちそうだったが、踏みとどまった。
一郎太は、後ろに下がり、助走をつけて、飛び蹴りをくらわした。
お頭は倒れたかにみえたが、しぶとく、起き上がる。
その脳天に、今度は、青山の鉄鞭が、唸りを上げて降り下ろされた。
手下たちも、同心たちに取り押さえられた。
「引っ立てい」
青山久蔵の声が、芝居小屋に響いた。
小説 八丁堀の七人18
その十八
その瞬間、
カキン
と、いう音と、ともに、お頭の刀は弾き飛ばされた。
「誰だ!」
お頭たちが、ひるんだ隙をついて、大五郎は、鶴吉と亀吉の手を取り、盗賊たちから距離をとった。
「北町奉行所である」
磯貝総十郎の大音声が小屋に響いた。
「てめえら、その子どもらをどうする気だい?」
青山の眼光が、凄みをましていた。
「てめえらの薄汚い欲のために、子どもを使うんじゃねえ!」
八丁堀の七人たちは、盗賊たちに、にじりよった。
「父上!」
大五郎が、青山の顔を見て叫んだ。
「旅一座の権蔵とその一味。上方での悪行、書状により明白である。松田屋、並びに、喜久屋の蔵破りについても詮議いたす。神妙に縛につけい!」
磯貝総十郎の声を打ち消すように、お頭が、叫んだ。
「やかましい!やっちまえ!」
お頭は、飛ばされた刀を拾い直して、同心たちに挑んできた。
孫右衛門の煙幕玉が飛び交った。
兵助、源吾、八兵衛、総十郎たちが、手下たちの短刀に、十手で応戦する。
子らは、その中を逃げまくった。
しかし、亀吉が、小道具につまづいて、転んでしまった。
「ちきしょう、裏切りやがって!」
お頭の刃は、今度は、亀吉に向いた。
「危ない!」
一郎太が、自分の身を投げ出した。
一朗太は、一撃目は十手で刀を受け止めた。
が、次の刃は、受け止めきれず、左腕をお頭に斬られてしまった。
「くっ!」
「い、一郎太さん!」
一郎太は、流れる血を押さえようともせず、慌てる亀吉をその腕で庇った。
「お前ら、なんで、こんな薄汚いガキのために、命はるんだ」
お頭は、せせら笑った。
「薄汚いないのは、そっちだろうが!腐って腐りきった悪から、弱い者んを守るのが、私の仕事だ!」
一郎太は、十手をかざしながら、お頭の一撃をかわし、お頭の後ろに、回りこんだ。そして、飛び上がり、お頭の首の後ろに、十手を降り下ろした。
「ぐおっ」
お頭は、崩れ落ちそうだったが、踏みとどまった。
一郎太は、後ろに下がり、助走をつけて、飛び蹴りをくらわした。
お頭は倒れたかにみえたが、しぶとく、起き上がる。
その脳天に、今度は、青山の鉄鞭が、唸りを上げて降り下ろされた。
手下たちも、同心たちに取り押さえられた。
「引っ立てい」
青山久蔵の声が、芝居小屋に響いた。
小説 八丁堀の七人18