その十九 少年と盗賊

八丁堀の七人 少年と盗賊

その十九

亀吉は、青山の前に、自分の両腕を差し出した。

「おいらは、色々悪いことをしました。団子や饅頭を盗みました。それから、大五郎さまをかどわかしました」

「お前は、八丁堀をだました。百叩きでも足りないくらいだな」

磯貝が、その腕を取ろうとした。

一郎太が、その背中に懇願した。

「騙されたのは、私のせいです。私が、亀吉たちのことをしっかり見ていたら、亀吉の言葉の裏にあることに、もっと早く気づいてやれたはずなんですから」

「そういや、総十郎、はじめは、亀吉を胡散臭いと思ったんだろ。なぜ、その勘を信じなかったんだ。亀吉をしっかり問い詰めなかったのは、てめえの落ち度じゃねえのかい?」

「そ、それは……は、はい。私目の落ち度です」

青山の言葉に、総十郎は、渋々答えた。

「それになあ、源吾。盗人の前で、この子は、与力の息子だと、大声で言うなんざ、危ねえなあ」

「え?え?お、俺のせい」
源吾は、うろたえた。

「まあ、いいじゃないですか?私が、亀吉の嘘を見抜いたんだから」

と、八兵衛が得意そうに言ったが、青山は、
「そうだな。誰かさんが、寝過ごして、遅刻したおかげだな」
と、皮肉った。

「かどわかしは、弟を救うためです。見逃してやっても良いはずです。しかし、今までの盗みのことがあります」

兵助が毅然と言った。

「そうだな。盗みは、小さくても、許されない」
孫右衛門の声は静かだが、厳かった。

「百叩きか……」
青山は、考えこんだ。
そんな青山を大五郎が、見上げていった。

「鶴ちゃんを、助けたの。亀ちゃんは、悪い人から鶴ちゃんを守ったよ」

その瞳に、青山の顔が少し崩れた。

「七叩きの刑だ!亀吉!」

青山が、亀吉の尻を叩いた。
「総十郎!次!」

え?と、戸惑いながらも、総十郎も続く。八兵衛、兵助、孫右衛門、

「もう、盗みなんかするんじゃないぞ」
と、言いながら、皆が尻を叩いた。

「え?俺のせい?」
と、まだぶつぶつ言いながら、源吾の叩きは、か弱いものだ。

一郎太の番になった。

「バカ野郎!盗人と取引だなんて。お前、お前、もう少しで、死ぬとこだったんだぞ。こんなバカ野郎と思わなかった私もばかだ。バカ野郎だ」

一郎太は、亀吉の尻を叩いた。
何度も何度も、叩いた。

「一郎太さん、痛いよ。痛いよ。ごめんなさい。色々ごめんなさい。もう、しないよ。ぜったいにしない。盗みもしない。酷いことも、言ってごめんなさい。親の金で同心してるとか。おいら、間違ってた。同心の仕事って命がいくつあっても足りないよ。こんな、こんなだめなおいらを庇って。血が、血がいっぱい、出てるよ。ああ、ごめんなさい」

「亀吉!いいよ。もう、何も言わなくていい」

一郎太は、亀吉を思い切り抱きしめた。

七叩きは、百叩き以上の痛みを持って亀吉の身体に響いたのだった。

小説 八丁堀の七人19
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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