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その四 兵助、怒りの鉄拳

その四

「なんだ、なんだ、そのしけた面は。ただでさえ、むさくるしい男の顔なんざ見たくもないってのに」
与力・青山久蔵が、いつもの毒舌を吐き散らかせながら、同心部屋に入ってきた。

「磯貝、あの夜鷹が殺された事件の探索は、はかどってるんだろうな」
青山は、原田誠之助の事件の報告を聞くよりも、三日前に起きた話を切り出した。

「あ、あれは、ですねぇ、鋭意探索中でして、あのそのいやはや、なにぶん、手がかりがですね、ばっさり斬られた刀傷ってことはわかってるんで……。たぶん、下手人は侍だとは思うのですが……」
磯貝のしどろもの返答は、これまた、調べが進んでいないことを物語っていた。

「おめえはいつでも、探索中、探索中。それにしては、茶ばっかり飲んでるんじゃねえか。おめぇの頭は、事件のことよりも茶で満たされて、ちゃぽんちゃぽぉんと、音がしてるんじゃねぇのかぃ?」

磯貝はその言葉に思わずゆっくりと頭をふってみた。もちろん音などはしない。
すぐに我に帰って、青山の嫌味を振り払うように、今度は小刻みに頭をふるのだった。

「袈裟懸けの刀傷か……。研ぎ屋にはあたってみてるんだろうな?」

「もちろんですとも、青山様。はい!もう、磯貝さんよりも、この源吾が足を棒にして、この広い江戸の刀の研師にあたってまわっています。しかし、なぜか、どこを当たってみても、誰に聞いても、そういう不貞のやからが持ち込んだ方が、どうしてもみつからないんです。青山様!!!」
青山の問いに、源吾が哀れむように訴えた。

「なんだ、なんだ、そのしょぼくれた面は!」
青山が一喝する。
「まだまだ、探しようが甘ぇんだよ。もう一度でも、二度でも、三度でも、研屋をあたってくるんだ」

「はい、わかりました」
源吾は、そう言って青山に背を向けたが、思わず、愚痴が飛び出す。

「青山様は、いいよなぁ。探して来い。って言っておけばいいんだから。こっちは、休む暇もなく、もう、毎日、毎日、歩いてばっかりなんだから。口だけ動かすのと、足動かずんじゃ、えらい違いだよな、まったく」

小声でぶつくさと言う源吾に、青山も毒舌で返した。

「源吾よぅ。お前さんの口もよく動くじゃねぇか。口や足動かしてるだけじゃなく、ちったぁ、ここを動かしてみちゃあどうだい」

青山は、源吾の頭を景気づけのように扇子で叩いた。
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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