その九 兵助、怒りの鉄拳!

その九

七日が経った。

兵助と八兵衛は、薬屋や卸問屋をあたってみていた。
「三吉さんですか?そういう名の人は、心当たりはないですが…」
「さぁ?」
「知りませんねぇ」
誰も、三吉という人物を見知った者はいないようだった。

八兵衛は、ふと思いついてこんな問いをしてみた
「今、いちばん、勢いのある薬屋はどこだい?」
「はい、はい、それなら、菊屋さんですよ。生薬屋の」
「菊屋?」
「はい、7、8年前から、急に店をかまえて、大きくなったのです。店主の方は、たいそうな技の持ち主ですよ。作る薬は、大変よく効くそうでして、大人気だそうですよ」

「7年前かぁ……そうか、ありがとうな」


兵助たちが菊屋に出向くと、侍が数人、薄ら笑いを浮かべながら出てくるのに行き会った。
一人の侍は、同心姿の兵助をなめまわすように見つめた後、「ふん」と、鼻を鳴らした。
「なんだ?貴様、その態度は!」
いけすかないその態度に兵助は、思わず声が出たが、八兵衛は、それをなだめて止めた。
それを見た侍たちは、それ以上は何も言わず、二人に背を向けて立ち去った。


菊屋の主人は、物腰の柔らかな男であった。
名は「弥太郎」と言い、「三吉」ではなかった。

八兵衛は、当たり障りのない世間話をしながら、店を構えた時の様子を話してもらった。
よどみのない調子で店主・弥太郎は答えた。
しかし、その流暢な話し振りに、逆に八兵衛は不審に思った。

「今さっき出て行った、あのお侍は、誰だい?」
弥太郎の顔が、一瞬、こわばったようにみえた。
が、何事もなかったように、すぐさま笑顔になった。
「おなかを急にこわされたと言ってみえられただけです。お薬をお渡ししたら、お帰りになりましたよ。お名前などは、聞いてはおりませんが……」

「いや、何でもない。長居をしたな」
八兵衛と、兵助は、菊屋を後にした。


八兵衛が店の前を出ると、青山が店の前に着流しを来て立っていた。またしても非番のようである。

「お、その顔、何か掴んだかぃ?ちったあ、足だけでなく、頭をつかわなきゃなぁ。なぁ、八よぅ」
「いえ、まだ、何もわかったわけではありません。ただ、7年前から店が急に大きくなった。ってのが、ひっかるだけです」


「そうだ、青山様!今さっき出て行った、目つきの悪い侍たちに会いませんでしたか?」
兵助は、まだ、あの侍が気になるらしく、青山に尋ねた。

と、すぐにその名は知れた。


「ああ、あれか?あれは、佐川玄太夫のせがれ、佐川玄之進だ」
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ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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