その十 兵助、怒りの鉄拳!

その十

佐川家の屋敷に、弥太郎は上がっていた。
「佐川さま、今までなりをひそめていた同心たちが、うろうろしておりますなぁ」
佐川は、黙って茶をすすっていた。
それをみて、弥太郎は、話題をかえた。

「それにしてもおぼっちゃまの所業に困りましたな」
佐川は、弥太郎を睨みつけた。
「あいつは何もしていない」

「はい、はい、そうでございましたね……たしか、下手人は、なんとかというごろつきでございましたね。ただ、調べの最中に、ケンカ沙汰をおこして島送り。殺しの調べもは結局うやむや。まったく、南町で当時奉行をなさっておられた佐川様のこと、下手人を捕らえることも、作ることも造作もないことでしたね」

「何のことを言っているのだ、三吉!あの事は、下手人は、だ。しかし、証がなかったのだ。その最中にケンカ沙汰、島送りにしただけだ」

語気の荒くなった佐川だったが、弥太郎は、気にもせずに話題を元に戻した。

「このところ、玄之進さまが、私のところに金をせびりにきます。もちろん、恩義ある佐川様のご子息さま。もちろん御用立てはしておりますが、こうやって同心どもうろうろしておりますので……」

「みなまで言うな。わかっておる。三吉。それにしても、お前のあの毒で、殺しとわからぬように、あの男を始末したのではなかったのか。」

「見破られぬはずはないと思っておりましたが、北町にも目ききがいるようですな。それより、佐川様、私も、もう少し、店を大きくしとうございます。それに、私の名は弥太郎でございますよ。三吉、もうその名は、捨てましてございます。いや、佐川さまからつけていただいた名ではありませんか」

佐川は、弥太郎、いや、三吉は微笑みながら、平然と言った。
「そんなことは知らぬ。分かっておる!金なら用意しておる」

「いつも、いつもありがとうございます。また、私の毒が入用なときはどうぞ、お申しつけください」

弥太郎こと、三吉は、平伏しながらも、その顔には不気味な笑顔が浮かんでいた。

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ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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