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拝大五郎・外伝『凧、凧、あがれ!』

拝大五郎・外伝「凧、凧、あがれ! 」

その一~大五郎~

夕暮れの草原に幼ない子が一人。

その子は細い腕で、土を掘っていた。
小さなその手で土を掘る徒労を知るその子は、道具を探した。
小屋から鍬を見つけたその子は、慣れぬ手で土を掘った。
膨大な時を要して、戦いの末力尽きた者を、土の中へと埋葬した。
暗闇の中、その子はまさしく、孤独であった。
しかし、この日が来るであろうことを、日々感じていた子でもあった。

暗闇の中、その子は歩いた。
ただ、地面だけを見据え歩いた。 

山道を降り、まだ人覚めやらぬ街道に出た。
朝日が昇り、人でにぎわう街道。
もうその子に傍らに、父はいない。

あてもなく歩くその子にも、誰にも、陽の光が降り注いだ。
その子は、ふと、空を仰ぎみた。

その空が、一瞬、灰色の渦を巻いたように、ぐにゃりと動いた。
その子は思わず目をこすった。

初秋のその青い空に季節はずれの凧があがっていた。
不意にその凧は糸が切れた。風が凧をさらい、凧は、その子の視界から消えた。
また、その子は地面だけを見て歩くしかなかった。


拝大五郎・外伝~凧、凧、あがれ!~

この物語は、生と死のはざまで生き抜いてきた拝大五郎が、愛と希望に満ちあふれた人の中で、おだやかな日々を過ごす物語である。

<主題歌>
「その青い空に」~作詞・ひらたま~

君の瞳には何がうつっている
殺戮と死の日々 悲惨な毎日
でも君はみていたね
青い空と小さな花 祭りににぎわう人の群れ
君の心はいつも優しさに満ちていた
君は一人でそれをみていた
もう一度 みてごらん 
この青い空を この広い空を
君の瞳には何がうつってる?
きっと明日という日がみえるはず

<主な出演>

拝大五郎 小林翼 

道の向こうから走ってくる大五郎、川原で草を摘む、笹舟を浮かべる、犬とじゃれる、川で泳ぐ、木の実を拾う、雪だるまを作る、春夏秋冬、さまざまな季節の中の大五郎。

仏田八兵衛 片岡鶴太郎

おでんあちちの八兵衛、うどんあちちの八兵衛、鍋のふたをあけてあちちの八兵衛。いろんなあちちの八兵衛。

青山久蔵  村上弘明

釣りをしている青山さま、飲みすぎて縁側で寝そべっている青山さま、大あくびの青山様……


※2016/1/27にミクシイより再掲載→その後1/8の記事欄に移動予定
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2凧、凧、あがれ!

その二~飛甚左~

大五郎が行く街道の向こうの先で砂煙があがり、人々がざわめいた。
「お七里(しちり)が来るぞ~。お七里の飛甚左(とびじんざ)が来るぞ~」
「なに、なに、あの飛甚左か?」
「やつは、子供の死に目にも、会うことなく走っていた噂だが、本当か?」
「ああ、女房が泣きついても、刃物突きつけても、絶対に足を止めなかったっていうやつだ」
「ひえ~!くわばら、くわばら!」

みなこぞって、お七里・飛甚左に道をあけている。人々がよけたその道の真ん中を、飛甚左が葵の御紋の入った文書入れを担いで走っていた。

地面に目を落としていた大五郎は、気づくのが遅れた。あわてて、道からそれようとしたが、時おそく、飛甚左とぶつかり転んでしまった。

「ああ」「なんてこった」
人々の口から悲鳴がもれた。
お七里とは、藩主自らが受発する文書を、七里ごとに持送りする人夫のことである。特別な通信を運ぶことゆえ、特権をあたえられていた。お七里の通行を妨げたその子が、切捨御免にされるかもしれないと思案したのである。

飛甚左はその子を睨みつけ、人々は事の成り行きをかたずを呑んで見守った。
「あの飛甚左が足を止めた!」
「やばいぜ、斬るつもりなんじゃないか?」
「いやだ、やめておくれよぉ……」


怒りの形相の飛甚左の耳元で、かすかに声がした。

(……頼む……)

飛甚左はあたりを見回したが、その声を発した主らしき者は見当たらない。 自分の聞き違いだな。と、大五郎を無視し、走りだそうとした飛甚左であった。
が、また耳元で声がした。

(……その子を頼む……)

「くそっ、誰だ。うるさい。」
飛甚左は、小さな声で毒づいた。

「俺は走るのが仕事だ」
甚左は、左肩に文入れをかついだ上に、大五郎をもおぶって、街道を走り出した。

大五郎は、甚左に担がれたままなすすべもなかった。
走り続ける飛甚左の目に番屋が入った。飛甚左は、大五郎を放り投げるように、その前で、大五郎を肩からおろした。
「じゃあな」
飛甚左はそのまま、走り去った。


飛甚左が、今、自分がおぶってきたその子が、「拝の子・大五郎」であったことに気がつくのは、ずっと先のことである。
そのことをすぐに、思い出しさえすれば、冥府魔道の修羅の道を生き抜いてきた大五郎を、番屋の前に置き去りにすることはなかったであろう。

3凧、凧、あがれ!

拝大五郎・外伝「凧、凧、あがれ!」

その三~八兵衛~

大五郎は、番屋の前でこわばっていた。 自分がおたずねものになっていたことを知っていた子である。 大五郎は後ずさりし、きびすを返した。だがまたしても、大五郎は男にぶつかって尻餅ちをついた。 今度は大五郎は、躊躇せずにすばやく立ち上がった。

「おおっと、ごめんよ。痛くなかったかい?」
その男は、穏やかな口調で大五郎に微笑みかけ、背をかがめ大五郎に声をかけた。
大五郎は小さくうなづいた。が、男は大五郎の腕から血が出ているのに気がついた。着物も、ずいぶん泥で汚れている。腕だけでなくあちこちすりむいているようだ。
「こりゃあ、いけねぇ。あちこち怪我してるじゃないか。弥生先生のとこいって、薬でも塗ってもらわねえと」
男は、大五郎の腕をとったが、大五郎は「痛くない」と、その腕をふりほどいて、男の前から逃げ去った。

「あ、八兵衛さん、今日は非番ですか?」
番屋から岡っ引きの徳松が顔を出し、その男に挨拶した。
「ああ、天気もいいので、ちょいと、こいつをあげようと思ったんだが、糸が切れちゃって、ざまあねえな」
男は糸の切れた凧を持って、小さく笑った。

その男、名を仏田八兵衛(ほとけだ・はちべえ)北町奉行所の同心である。同心の月給では心元なく、凧作りの内職をしている。
八兵衛は、大五郎が走り去った方角を少しながめていた。

4凧、凧、あがれ!

拝大五郎・外伝「凧、凧、あがれ!」
その四~涼次~

大五郎は、走る、走る。走り疲れ、歩いた。どこをさまよっていたのか、気づいた時には、夜になっていた。
「ぐぅ~」 と、大五郎の腹の虫が鳴った。その空腹の大五郎に、味噌のいい香りが漂ってきた。 そして、香りとともに、大きな声も聞こえてきた。

「今日は、具沢山の味噌鍋だ。う~~ん、いい香りぃ~。それにしても味噌問屋での、奥の屋敷の襖絵作り。給金もらえて、しかも極上の味噌がお土産たぁ~、ついてるじゃねえか。それに料理人の腕も極上ときてる。さあて、食うとするかなぁ~」
一人言にしては、ずいぶん大きな声である。

楽しげなその声に、思わず耳を傾けた大五郎だった。
が、不意に、大五郎の耳元を何かが、横切った。それは、向かいの家の壁に突き刺さった。

「誰だぁ~?玉櫛か?いいにおいだろ?入って来いよ。食わしてやっから。腹減らしてるのはお見通しだぜ。腹がぐ~ぐ~鳴ってるのが、ここまで聞こえてるぜ。ほらほら、入って来いよ~」
大五郎は、「入って来いよ」のその声につられた。大五郎の右手は家の戸を開けていた。

男が一人家の真ん中で、いろりの上の鍋をかき回していた。

「なんだ、小汚い餓鬼か。玉櫛にしちゃあ小さいたぁ~思ったが。まぁ、いい。食うだろ、食うだろ。まぁ、食わなくてもいいぞ。お~れ~は、食う!」
大五郎の返事も聞きもせずに、鍋からお碗に少量の汁をそそぐ。
「う~ん、いい味!絶品、絶品」
一人味見をしながら、悦に入る男である。

大五郎の目に飛びこんできたのは、鍋ではなかった。大きな絵であった。そして、絵の具と筆。おそらくはその男が描いたのであろう。大きな絵だった。 天女の絵に竜の絵、虎の絵。

大五郎は躊躇した。自分の着物が泥に汚れていることを気にしたのだ。
大五郎は、一端、ぺこりとお辞儀をすると、家を飛び出した。
大五郎は、着物の泥をはたいたが、全部はぬぐいきれない。
ぱたぱたという物音をいぶかしがり、男が大五郎の様子を見に来た。
「そんなこと気にしたのか?ひょっとして、絵が汚れるとでも思ったのか?」
大五郎は、大きくうなづいた。

男は、大五郎の頭を大きな手でがしりと掴んだ。
「大丈夫だから」

二人は鍋を囲んだ。男のそばに大五郎はちょこんと座り、手をあわせた。
「さあ、食べるぞ。煮つまったら、煮つまったで、上手い。だが、香りが飛んじまう。早く食うぞ」
「おれは、経師屋の涼次って言うんだ。襖絵や掛け軸描いたり、作ったりしてるんだ。まぁ、そんなことはいい。熱いうちがうめえんだ…あう、あう、あつっ!」
涼次は具を口にいれたが、熱すぎたためにのた打ち回った。
「あ、あつぅ~、また、この豆腐。と、豆腐が、の、喉を~~!」

大五郎はそんな涼次を見て、声を出して笑った。
「笑うなよ~。ほんとに熱かったんだから~」
涼次は大五郎に泣き笑いのように笑みをかえした。

涼次も大五郎もひたすら食べた。
涼次はその後はしゃべりもせずに、ちらちらと大五郎の様子を見るだけであった。しかし、大五郎の碗が空になったと見て取ると、さっと、おかわりをついでくれる気遣いをするのだった。

満腹になった二人だった。
「泊まって行くだろ」
涼次が声をかけた。
大五郎はうなづき、小さく言った。
「……大五郎……」

頭を下げる大五郎のその仕草に、涼次は、もう一度大きな手で大五郎の頭を掴んだ。
「そっか、大五郎というのか。いい名だ」

大五郎は涼次のそばで、すぐ眠りに落ちた。

5凧、凧、あがれ!


その五~源太~

夜明け、大五郎と涼次は、入り口の戸を叩く音で目覚めた。からくり屋の源太が、すまなさそうな顔をして立っていた。
「なんでぇ、何事だ?」
「涼次さん、すまねえ。おいら、ちょっと風邪ひいちまって。店、手伝ってくれるとありがたいんだけど」
からくり屋の源太とはいえ、彼のいう店とは、小料理屋のことである。死んだ恋人の店をその息子・作太郎とともに営んでいるのである。
「しようがねえなぁ。まあ、今日は仕事もないし」
涼次は大五郎の顔を見た。
「大五郎、お前も行くか?」
「うん」
大五郎は、明るくうなづいた。

「おっと、大五郎、これ。俺の古着を仕立て直したんだ。ゆうべ夜なべして作ったんだからな!着ろよな!」
涼次はぶっきらぼうな口調で大五郎に着物を差し出した。一枚の着物を仕立て直したのではないようだった。何枚かの着物を切って、繋ぎ合わせて一つの着物を作ってある。手の込んだ品であった。
「興が高じただけだから」
涼次はぼそりと念をおした。
大五郎は思いがけない贈り物に驚いた。涼次の顔をしっかりと見つめて礼を言った。
「ありがとう」
一言、一言に思いをこめる大五郎であった。
「おう!」

しゃがれて、かすれた咳をしながらも、源太は聞かずにはいれなかった。
「この子、誰ですか?あ、ひょっとして隠し子?」
「違う」
めんどくさそうに、涼次は答えた。
「ええ?だって、着物まで作ってやるなんて、信じられない」
「作りたくなったから、作っただけだ。くだらねえこと言ってると、手伝いなんか行ってやらないぞ」
「ああ、はい、はい、お、お願いします。余計なことはいいません」
大五郎は二人のそんな様子をみながら微笑んだ
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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