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新・八丁堀の七人 江戸城大爆破?爆弾魔を捕縛せよ!

新・八丁堀の七人
その一 江戸城大爆破?爆弾魔を捕縛せよ!

うららかな小春日和である。北町奉行所同心・花田孫右衛門は、先の事件を書面にまとめていた。

「精が出ますね。孫さん。ま、一服しませんか」
同僚の仏田八兵衛が茶を差し出した。

「おっと。こりゃ八兵衛さん、ありがとさん」
孫右衛門は、差し出された茶をすする。

「これは、ささっと終わらせて、こいつも仕上げなきゃならないんで」
と、内職を取り出した。
爪楊枝作りをして家計の足しにしているのだ。

花田孫右衛門は、剃刀と呼ばれたこともある仕事熱心な男であった。しかし、再婚を機に、家庭第一、仕事は二の次。をモットーとしたのである。
孫右衛門は子宝にも恵まれ、先妻との子も含め、なんと七人の子沢山であった。

「養子に出したり、嫁に行くことが決まった娘もいるんですがね。まだまだ、稼がないと。本当に金がいることばかり」

そう言いながらも孫右衛門も顔にはどこかしら笑みが浮かんでいる。

「とか、言いながら、孫さん顔がにやけてますよ。家族がたくさんいる。それだけで、幸せなんでしょ?」

八兵衛の問いには答えなかったが、孫右衛門の表情は柔らかいままだった。

「一番下の子、留右衛門……、いや千代丸はいくつになったんだい?」

「七つになりましたよ。上の子達に、もまれて育ったせいか、無鉄砲でがさつなとこもあってね。もうちいと、落ち着きがあるといいんですがね。まったく悪餓鬼ですよ」

「千代丸は、たくましいよ。あの事件をくぐり抜けた子なんだから」
八兵衛は感慨深く息を吐いた途端、孫右衛門の顔が厳しくなった。

「あの子の遺体を見た、あの時の恐ろしさは今でも忘れられません。千代丸は無事に帰って来ましたが、あの時、自分の体が引き裂かれたように苦しかった……本当にあの子だったら、あの子が死んでいたら私も死んでいたかもしれない……」

「千代丸が捨吉に拐われたあの事件……」※

孫右衛門の子、留右衛門は、産まれた直後に捨吉という男に誘拐されたことがあった。
捨吉は、竹姫の身代わりの子として留右衛門を拐ったのだ。
捨吉は留右衛門を殺して埋めたと言い、そこには子どもと、捨吉の母親の遺体があった。しかし、留右衛門ではなく、実は、死産した竹姫の子だったのだ。
すんでのところで、留右衛門を取り返すことに成功した八丁堀の七人だった。

そして、竹姫の気持ちを思って、留右衛門の名前は千代丸とつけかえられたのだった。

「千代丸という名前は優しい姫さまがつけてくれた。千代丸には、それだけを伝えてあります。自分がさらわれた、なんざ知らなくていいことです」

孫右衛門は、それ以上は何も言わずに楊枝作りに没頭し始めた。

※八丁堀の七人、第5シリーズ第4話



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2爆弾魔を捕縛せよ!

新・八丁堀の七人・爆弾魔を捕縛せよ!

その二

寺社の中では十人ほどの子どもが熱心に書き初めをしていた。和やかな中にも、心地よい緊張感がそこにはあった。

大きな背を小さく丸めて、松田悟之新は子らの文字を見て回っていた。

孫右衛門も七男・花田千代丸もその中にいた。
「千代丸、お前の文字は豪快だなあ」
初日の出と書かれた文字は半紙からはみ出しそうに大きい。

二、三人の子どもたちが千代丸の文字を覗きにきた。
勢いはあるが、なかばやけくそのような文字に子どもたちは笑った。
「こらこら、人のことより、自分の文字に集中しなさい」
「はい!」
子どもたちは、素直に席に戻り、寺子屋の中は、また静かになる。

当の千代丸は笑われたことなど、ちっとも気にしていない。
書き上げた半紙を高々と持ち上げ、少し誇らしそうにするのだった。
「千代丸、勢いがあなたの良さだが、次は、もう少しゆっくり書いてごらんなさい。そして、墨の黒と半紙の白を見てごらんなさい。白い部分が多くなると良い加減になると私は思いますよ」

「小さく書け」
とは決して言わない松田である。千代丸は、そこが気にいっていた。誰かの文字と比較することもない。
千代丸は素直に「はい」と答えるのだった。

家ではやんちゃばかりの千代丸だが、寺子屋ではおとなしかった。孫右衛門がみたら目を丸くするような素直さだった。

「あ、大五郎、ここの部分は素早く書いてごらん。そうすると勢いがでる。筆は立てて、背中は丸めず、背中も立てて、そうだ、上手いぞ、大五郎は筆をもう少し落としてごらんなさい。太い文字が書けますよ」

青山大五郎。青山家の養子となった拝大五郎である。大五郎は、ふう、と大きく息を吐き、筆を置いた。

見上げると、松田の笑顔があった。大五郎は、次の半紙を取りだし、一心に書き始めていく。
指摘した点を的確にこなしていく大五郎に、
この子はなんと吸収が早いことか!と、松田は思った。
大五郎の文字の上達ぶりには、松田も驚くばかりであった。

「おさよ、おさよは……」
「『申し分ない。上手い』でしょ。先生」
「いっつも、そればっかり。それしか言ってくれないんだもの。物足りないです。先生。」

「そ、そうか、すまんな」
松田は思わずたじろいだ。おさよは、松田が次の言葉を言うのをさえぎった。
「何か難しい文字を教えて下さいませんか?」
松田はわかったと、おさよに課題を与え始めた。

寺子屋の中が少しざわめいた。

千代丸は大五郎の背中をつついた。
「また、だよ。嫌な奴。ああ、高慢ちきってあいつのことを言うんだと思うな」
大五郎は少し首をかしげただけで、千代丸に背中を向け、また、書き始めに集中した。

「大五郎は真面目だなあ」

千代丸は斜め前のおさよを見て舌打ちをして、「こうまんちき」と、書いてくしゃくしゃと丸めるのだった。

3 爆弾魔を捕縛せよ!

その三

霧がたちこめる早朝の木立の中である。

八丁堀の同心らは、岡っ引きの徳松に案内されて火事跡に来ていた。

古寺はかなりの勢いで燃えたとみえ、まだ、くすぶっていた。
「焚き火の火が燃え移ったのでしょうか?かなり燃えてますね」
と、松井兵助が磯貝総十郎に問うた。

「おおかた、昨日、突風が吹いたんだろうな。焚き火の不始末だろうな」

「そうでしょうか?ゆうべは風はあまり吹いてなかったような」
古川一郎太もいぶかしげに問う。

「だから突然吹いたんだろうさ。だから突風って言っただろう」

「今日は霧が出てます。霧が出る時って風が吹かないような気がします」

一郎太は更に突っ込んで聞いたが、磯貝が口を尖らせた。
「じゃあ、霧の前に吹いたんだろうさ」

「それに、もし、つけ火なら火盗改めが出番ってくる。うちは追っ払らわれて用なしだよ。磯貝さん、ここは火盗改めに任せましょう」
お調子者の吉岡源吾が、眠そうな声を出す。

「磯貝さん、源吾さん、この徳松が、いの一番に、うちに、北町奉行所に、知らせて来たんですよ。みすみすこの現場を火盗改めに持っていかれてもいいんですか?つけ火するような悪党はすぐにでも取っ捕まえないと、また、つけ火をしますよ!真っ先に火事場を見つけた私達で捕えねばなりません!」

兵助は息巻いた。

「私達の中には、私達二人は除けといてね」
源吾は、磯貝と自分を指差した。

「後は任せた」
と、磯貝は、源吾とともに立ち去るのだった。

「まったく、あの人たちには、頭に来る!」
怒る兵助を一郎太はなだめた。
二人は、不審者を探すと言って、現場を後にした。

八兵衛は孫右衛門とともに、焚き火跡と、みられる跡に手をつけ匂いを嗅ぐ。
八兵衛は、
「孫さん、かすかですが、火薬の匂いがしませんか」
と、孫右衛門に聞いた。

「ああ、そうですね。します」
そう言ってから、孫右衛門は八兵衛の顔をじっとみた。

孫右衛門が作るのは、楊枝だけではない爆玉も作るのだ。

捕物出役の時には孫右衛門のお手製の爆玉が炸裂する。
辛子粉なども入っており、敵に脅威であったが、時々、見方も被害を受けることもあった。

かがんだ二人の間に、着流しの裾がみえた。

「あ、青山様!」

4爆弾魔を捕縛せよ!

その四 爆弾魔を捕縛せよ!

北町奉行所与力の青山久蔵である。

八兵衛と孫右衛門は起立して一礼をしたが、酒の匂いに、八兵衛は少しむっとした。
「青山様、これは、また早起き、こんなに早くに現場に来られるなんざ、早耳でいらっしゃいますね」

「いや、別に、酔い醒ましに歩いてただけでぃ」

「そうですか、朝酒。早酒とは結構なことですねえ」
八兵衛は皮肉を言ったが、青山は、ふっと軽く返す。

「おいら、与力だから。捜査や探索はお前ぇたち同心の仕事だろ。早く行きな。おいらは、捕物出役が仕事。だいたい、非番の日は飲もうが寝ようが、勝手にさせて貰うよぅ」

と、言いながら、青山の眼には、鋭い光があった。

この青山久蔵という男、確かに、捕物になると、非のうちどころがない。

悪党には容赦がないが、それ以上に部下にも厳しい。徹夜での捜索などざらである。
時には、上の者にも意見し、時には脅しをかけてでも取引をするような男である。
自分では捜査はしないと、言いながら、実は裏での単独捜査は茶飯事で、情報は、同心の誰よりも先に取得し、打つ手はことごとく、先読みしての捕縛であった。

「はい、ごもっともです。では、私も、兵助たちに遅れをとらないよう、聞き込みに参ります」

八兵衛は、町の者に対する優しさを同心たちにも分けてくれよ。と、思いながら現場を去った。

青山はとっくりをぶらぶらさせながら、孫右衛門を見据えた。
「孫よ、お前、何か感づいたんじゃ、ねえのかい?」
「はい……ですが……」

孫右衛門は言い淀んだ。

「お前ぇさん、八のこと、じっと見て何か言いたそうにしてたじゃないか?でも、口を開かなかった。何故だい?」

青山は二人と、同じように煤の匂いを嗅いだ。

「……それは、確かな証があったわけではありませんから。曖昧なことを口にすべきではないと思ったからです」

孫右衛門ははっきりと言いきった。
「そうかい。おいらは、わかるぜい。お前ぇの推量がな」

「青山様……」
孫右衛門と青山は、八兵衛の後ろ姿を目で追っていた。

5爆弾魔を捕縛せよ!

新八丁堀の七人
その八 爆弾魔を捕縛せよ!

「ひゃー、ふってきちゃったよ、ふられちゃったよ、弥生さん!」

不審火の聞き込みは、一向にらちがあかなかった。今日は出先で雨に降られ、八兵衛は、早々に同心長屋に帰って来た。

「え?誰を振ってきたんですか?振られたって、一体誰に告白されたんですか?したんですか?」
目をつり上げて、弥生が出迎えた。

「誰?え?告白?雨だよ。雨が降ってきたって言ったんだよ。濡れてしまったんだよ。すまない、新しい手拭い出してもらえないかな」

「あー、雨。そ、そうね。八兵衛さんは振られたり、振ったりなんてことはないわ」

弥生は恥ずかしい勘違いにあわてながら、首を振る。

「ぶつぶつ言ってないで、手拭い出してよ、弥生さん、畳にしずくが落ちちまう」

「はい、おとっつぁん」

と、手拭いを差しだしたのはおやいだった。

「おやい、来てたのか!」

「はい、弥生さんのお手伝いをしに来たんです」

「長旅だったろう、よく数馬さまが許してくれたな」

おやいはある事件をきっかけに八兵衛らとともに暮らしていた。
数馬はおやいの実の父親である。十年以上も前のことになるだろうか。実の父親が見つかり、おやいはこの家を出て行っ
た。
おやいがいた数年、八兵衛とおやい、弥生は親子のように家族のように互いに打ち解けていた。

「ずいぶん、大きくなったな。もう、どこにでも嫁にいけるな」
おやいは、八兵衛には眩しいくらいに美しく成長していた。

「そうね、じゃあ、ここに。おとっつあんの所にお嫁にこようかしら?」

「なんですって!」
「なんだって!」

弥生と八兵衛は同時に大声を出した。

「八兵衛さんみたいな親父はだめです。おやい、あなたには、もっとふさわしい人がいますよ」

弥生が大慌てで、おやいを八兵衛から引き離した。

「嫌だ。弥生先生、冗談なのに、慌てちゃって」

「あ、慌ててなんかいませんよ。この人が冗談を真に受けるかもしれませんからね。さあ、おやい、私の手伝いは大丈夫ですよ。父上の元に帰りなさい」

「えーー!来たばっかりなのに。あ、わかった。弥生先生、ひょっとしたら私に焼き餅焼いてる?」

「や、焼いてませんよ。焼くもんですか!た、ただね、八兵衛さんがね、ほら、間違い……を、しでかしたら、大変でしょ」

「間違い?まちがい?何を間違うって言うんだ、弥生さん、聞きづてならねえよ。仮にも、私はおやいを娘だと思ってだね!血こそ繋がらないが、私は今でもおやいを娘だと思ってる」

おやいの冗談に、少しときめいたことを隠しながらも、八兵衛は強い剣幕で弥生に迫った。

「ほほほ、私のも、冗談よ、冗談。……そう、そう、手拭いだったわね……」

「弥生さん、手拭いならおやいに貰ったよ、おい、弥生さん!」

弥生は逃げるようにその場を去った。

「もう、弥生さんにも困っちまうな」
頭を拭いながら八兵衛はつぶやいた。

「まだ水原弥生のままだなんて……いい加減、仏田弥生にしてあげなよ」

おやいはため息をつき、あわせるように、八兵衛もため息をついた。

「弥生さん、仏田弥生って言ってたんだよ、水杯は三三九度だって言ってたし、あと、あん時も……この前も。でもなんかダメになるんだよな。良いとこまで行くのに、いつでもなんか、ヘソ曲げちまうんだよ」
八兵衛が小さくつぶやいた。

「早くお嫁にしないと、弥生さん、おばあちゃんになっちゃうよ」
「あ、おやい、いかん、そのおばあちゃんって言葉は言ったらダメだ!」

八兵衛の制止は遅かった。おやいの言葉を弥生が聞き咎めた。

部屋の中はふいに暗くなり、雷鳴も轟いた。

「『ババアになる前に、嫁に来い』だなんて、そんな失礼なことを言う人の元になんて嫁ぎませんよ!」

「ひぃー」
ぬぅと出てきた弥生におやいは悲鳴をあげた。

「まさか、おとっつあん!」
「こ、この前な、そう言ったら、こんな風に弥生さん、怒っちまって」

またしても、雷鳴が轟いた。

弥生はありったけの手拭いをぶつけた。
「ひゃー、弥生さん、ごめんなさい。弥生さんは、ババアになんかなりません。わーーー」

「あらら、また、夫婦喧嘩?仲の良いこと」

吉岡源吾が覗き見してのつぶやきに
「どこが!」
と、八兵衛と弥生は大声を張り上げた。
プロフィール

ひらたま@でんぷん

Author:ひらたま@でんぷん
山口県在住 
女性(若くないです)
O型、蠍座
八丁堀の七人と、子連れ狼の大五郎が好き

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